中学生棋士の藤井聡太四段の活躍で
さらに注目度を増した感じがする
将棋
将棋を覚えると様々な能力
をバランスよく養えます。
この記事では
・どの能力を?
・なぜ養えるのか?
について説明しています。
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1. すべてに共通する基礎的な力
まずは特定の分野にとどまらない
どんなことにも役立つ共通の能力
に関することから説明します。
1-1. 集中力がつく
これは言わずもがなですね。
プロの対局(対戦)でもない限り持ち時間
が短い場合が多く、対局の最中は常に集中
することが要求されます。
ですので
短時間の持ち時間で将棋を指すこと
で自然と集中力が身に付きます。
やはり勝負となると勝ちたいという
思いが芽生えるので学校の勉強などよりも
格段に集中力が増す可能性が高いです。
持ち時間とは
一局の将棋で一人の棋士が使える制限時間です。
例えば、持ち時間各5時間なら対局者は2人なので、合計10時間にも及ぶ対局になります。
1-2. 忍耐力がつく
将棋の対局では忍耐力が必要な
場面が頻繁に登場します。
どんな場面かと言うと、
少し形勢が悪い、不利な時です。
そんな状況では我慢が必要です。
そこで我慢ができないと、
一か八かの無理な攻撃に出て返り討ち
に合い負けが確定してしまいます。
なので、少し形勢が悪い時は、
それ以上は差が開かないように
忍耐強く粘って相手のミスを待つ
心の強さが必要になります。
1-3. 待つ力がつく
これは2つの要素があります。
1つ目は、
相手が考えている時間を
ゆったりと待つ力です。
2つ目は、
攻めの好機を待つ力です。
将棋は自分の陣形が100点の状態で、
相手が100点ではない状態になった時
を捉えて攻撃を仕掛けると勝つ確率が
高くなります。
自分の陣形を整えながら虎視眈々と相手
がバランスを崩しベストではない陣形
になるタイミングを待つ力が大切です。
1-4. 感情をコントロールする力がつく
スポーツなどでは試合の最中に頭に
血がのぼってラフなプレーをする。
というシーンが時々見られます。
なかでも格闘技は顕著ですよね!
ボクシングでクリーンヒットされて
頭に血がのぼり猛反撃に出たものの
もう1発打たれてダウン!!
っていうシーンがありますが
本当に強い選手はこのシーンでは
冷静になって立て直すものです。
感情をコントロールしてムキにならず
ダメージを回復させることが大切だと
知っています。
ところで
将棋の場合はというと
どんな時も
動かせるのは駒だけ
というところが良いのです。
だって
どんなにエキサイトしていても
相手に殴りかかるわけにはいかず
動かせるのは常に駒だけですから、
冷静に次の一手を考える
しか他に方法がないんです。
将棋を指すということは必然的に
そんな状況になるということですので
自然に感情をコントロールする力が
身につきます。
1-5. 負ける力がつく
はぁ!?負ける力??
って思いました!?
でも、これ大切だと思います。
どう負けるのか
正しい負け方というか
次の勝利に繋がる負け方
です。
将棋で対局すると大きく分けて
- 強いけど勝ちやすい相手
- 強くて勝ちにくい相手
の2つのタイプの相手がいます。
1のタイプの人はあきらめやすく、
こちらが有利になると粘ることをせず
あっさり土俵を割ります。
2のタイプの人は最後まで勝負を
捨てず虎視眈々と逆転を狙ってきます。
この2つのタイプでは対戦相手として
どっちが怖いかというと明白ですね?
やはり人生で大きな成果をあげる人は
2のタイプの方が多いようです。
不利になっても最後まであきらめない
その姿勢で将棋を指すことが大事です。
2. 論理的に考える力(論理的思考)
将棋によって身につく力と聞いて、
すぐに思いつくのが論理的な思考力
ではないでしょうか?
具体的にどんな思考力が身につくか、
を順番に紹介していきます。
2-1. 先を読む力がつく
「羽生さんは何手先を読めるの?」
なんて質問があるように将棋と言えば
「先を読む」の代名詞と言えます。
故・米長邦雄元名人の修行時代は
1500手以上の詰将棋を頭の中だけで
詰ませたそうですよ。
読む力というと何手先が読めるか?
ということに焦点があたりがちですが、
大切なのは何手も先が読めることではなく
- 有力な候補手(アイデア)を生む力
- それに対する相手の指し手を推測する力
の2つが先を読む力の真髄です。
ですので、先を読む力が身につくに従い、
アイデア力と推測力も向上します。
このことは
ある事象が起きた時にその現象を多角的
に捉えて対応する能力をも育てます。
2-2. 未来を比較する力がつく
比較する力は前述の先を
読む力と密接に関係しています。
将棋の対局では次の一手に有力な候補手
が複数ある局面が必ずあります。
その時に棋士は各候補手ごとに先を読み
数手先の局面を頭の中で描いたうえで、
どれが最善の一手かを比較検討するという
プロセスを経て次の指し手を決断します。
ですので、
ただ単純に現状を比較するのではなく、
今後どう推移する可能性があるか?
を踏まえて
未来を比較する力
が養われます。
2-3. 状況判断力がつく
現状を判断するのはとても大切です。
「今いる場所(現在地)を把握する」
と言い換えればわかりやすいです。
例えば、目的地が東京だとして
現在地は「福岡県博多市です」
とわかっている場合と
「ここはどこ?山が見えるけど???」
という場合では
目的地の東京にたどり着ける
可能性が大きく違ってきます。
将棋の場合も同じで
- 現状が有利なのか?
- 不利なのか?
- 自陣の強みや弱みはどこか?
- 相手の強みや弱みはどこか?
などの状況判断がとても大切です。
例えば優勢な場合と不利な場合とでは
選択すべき次の手が異なってきます。
ですので
将棋を指している最中は状況判断を
常に行っていると言えます。
その結果として
状況を判断する力が知らず知らずのうちに
養われます。それは今というものを無意識
に常に意識している状態でもあります。
例えば
時代の流れを意識できる
ということにも繋がっていきます。
2-4. 計画を立てる力がつく
計画を立てる力は将棋を指す上では必須です。
- どんな作戦で
- どう守り
- どのタイミングで
- どう攻めるのか?
というような計画を立てることは、
まさに将棋そのものと言えます。
将棋には「手順前後」という言葉があり
この言葉の意味するところは
同じ意味の指し手でも指す順番を間違えた
だけで形勢が真逆の結果になってしまう。
とうことです。
どっちの手を先に指すか?
という判断は勝負の結果を左右する
とても大きな意味を持ちます。
どちらを優先するべきか?
この判断能力を持ち合わせていない人
は意外と多いようなので、この能力を
持っていると様々な場面で重宝される
ことは間違いないです。
2-5. 妥協点を探る力がつく
将棋は互いに同じ戦力や条件で戦うので、
実力が拮抗していれば自分だけに都合の
良い展開はなかなか訪れてはくれません。
そこで必要なのが妥協点を探ることです。
- 自分の言い分をどこまで通し
- 相手の言い分をどこまで聞くか?
その繰り返しで少しずつ有利にしていく
ことが将棋の本質だと思います。
自分は満足
相手も概ね満足
というギリギリの妥協点を探り、次の一手
を考えることが将棋では要求されますので、
その力をつけることができます。
例えばビジネスの場面なら交渉力や
落とし所を探る力に通じます。
2-6. 相手の立場で考える力がつく
これは上記の妥協点を探る力に関連します。
相手が今の状況を
- どう捉えているか?
- 有利と思っているか?
- 不利と思っているか?
相手が数手先の局面を
- どう想定しているか?
- どうなれば理想と考えているか?
などを想定できていないと
相手との妥協点は探れません。
将棋は相手の思惑を見破る必要があり、
相手の立場で考える力は必須です。
3. 感覚で決断する力
将棋で学べることと言えば考える力
ばかりにフォーカスされがちです。
しかしながら
将棋を実際に指している人ならご存知
だと思いますがむしろ本質的には感覚
が身につくゲームです。
例えば
将棋のプロ棋士は直感で90%以上の確率で
最善の一手を選択できると言われています。
それに加えて
将棋の場合は制限時間内に次の手を指す
必要がありますので自分の感覚を信じて
実行する力が身につきます。
3-1. イメージする力がつく
将棋というゲームは中盤以降になると
「この形になれば勝ち!」
という 勝ちの形 をイメージして、
それが実現するように構想を組み立て
次の一手を選択していきます。
ですので、将棋の棋力が向上することは
イメージ力の向上に直結しています。
棋力とは
将棋を指す能力(実力)のことで
アマチュアの場合で最弱の30級程度
から最強の8段まであります。
3-2. 全体を見る力がつく
将棋の古い教えに
四香同視という言葉があります。
これは一言でいうと
「常に盤面の全体を見なさい!」
ということです。
戦いが起こっている部分だけではなく、
全体を見ることで思わぬ好手(良い手)
を発見することが出来ます。
これは目の前の状況に過度にとらわれず、
全体を把握した上で判断ができる力です。
四香同視の教えとは
天野宗歩(1816-1859)は江戸末期の将棋指しでした。
第十一代名人 大橋宗桂の弟子で棋力は抜群で、全国を巡って腕を磨き、実力十三段と言われましたが、出自が伊藤家でないために、家元世襲持回り制の当時にあっては名人位に就くことが適いませんでした。
しかし、後に棋聖と呼ばれた程の名手で、スピードと捌きを基本にする将棋を集大成して現代将棋の基を築きました。
宗歩は少年時代に師匠の大橋宗桂から「四香同視」の教えを受け、終生これをモットーにしました。
将棋は最初に駒を並べた時、四隅に香車があります。この4枚の香車をいつも視ながら戦うこと、すなわち「盤面全体を常に把握していること」と言う教えであり、将棋において特に大切なことではないかと思われます。
3-3. バランスをとる力がつく
将棋の陣形で美しい形というのがあります。
美しい形は例外なくバランスが良いです。
バランスをとる力は定跡を学んだり、
プロの実戦や自らの対局を通して身につき、
実力がついてくると感覚的にバランスの
良い形の美しさがわかるようになります。
定跡とは
将棋などで、昔から研究されてきて最善とされる、きまった指し方。
とは言え実際に最善かどうかには疑問もあり、昔からある定跡が最近になって覆される例は数多あります。
ですので最善というよりは定番の指し方と理解する方が的確な表現だと思います。
4. その他
最後に参考情報を紹介します。
4-1. 礼節を重んじる
将棋は「礼に始まり、礼に終わる」
と言われています。
始まる前は「お願いします!」
終了後は「ありがとうございました」
と言葉を交わします。
でも、これだけですと武術など多くの
日本文化に共通して言えることです。
将棋の特徴的なところは負けた側が
「負けました」と宣言するところです。
実はこの宣言の前には気持ちの整理を
するプロセスを経る必要があります。
負けたという現実を短時間で受け入れ
気持ちを切り替えることが大切です。
4-2. 将棋と学歴
「兄は馬鹿だから東大へ行った!」
という趣旨の言葉を残したのは
米長邦雄さんと谷川浩司さん
という2人の名人経験者です。
その真意は東大に合格するよりも、
将棋のプロになる方が多くの時間を
勉強に費やす必要があるからしいです。
昔は「将棋指しに学歴はいらん」と言われ
低学歴のプロ棋士が多かったようです。
ですが、最近は高学歴の棋士も多くなり、
なかでも早稲田の卒業生が多いそうです。
学生将棋の世界でも活躍している大学や高校
は高学歴、名門と言われるところが多いので
将棋の棋力と学歴は関連が深いと言えます。
4-3. 客観的な見解
将棋と脳力の関係をどう考えているか?
いくつかの立場からの見解をまとめました。
4-3-1. ベネッセの見解
ベネッセは将棋で身につく力として、
3つの精神力と礼儀作法をあげています。
下記リンク先のベネッセのサイトをご覧ください。
将棋は子どもの心を強くする、将棋で育まれる力とは?
4-3-2. 将棋は脳を育てる
脳科学者の茂木健一郎さんと羽生善治さん
の対談で「将棋と脳の関係」が語られています。
下記リンク先のサイトをご覧ください。
羽生善治×茂木健一郎 特別対談授業「将棋は脳を育てる」
4-3-3. 囲碁や将棋を授業に取り入れた学校
脳を鍛えるのに便利なツールだとして、
囲碁や将棋を授業に取り入れる小学校
が増えているようです。
この記事でもすでに何度も書いていますが、
将棋は様々な能力を同時に育てることが
できる数少ないツールです。
しかも、勝負という性質上、机上の学習に
とどまらず、決断し実行する体験も兼ね備えています。
このことから
将棋を覚えることは子供の実践的で幅広い
能力を身につけるのに役立つと言えます。
4-3-4. 将棋と子供の能力に関する本
こんな本がありました。
この著書では
礼儀作法、根気、論理性、決断力――足りない「何か」を身につける最高の「教育」がここにある!
と掲げています。
人生をよりよく生きるための力をつけるのに
これほど適したツールは他にないかも知れません。
5. 将棋を覚える効果のまとめ
将棋で身につく力
をあげれば、これまで述べたように
様々な能力を列挙することができます。
とは言え
これらの能力は将棋に限らず他の学習法
でも身につけられると思います。
しかしながら
机上の学習だけでは実際の人生のシーン
では役立てることは難しいでしょう?
将棋から学ぶことの大きな価値は机上の学習
ではなく実戦であり勝負だということです。
- 勝ちたい気持ちが集中力を高める
- 机上の学習ではなく実戦力に身につく
将棋はすぐに結果が明確になってしまうので
ある意味では過酷な学習法とも言えますが
人生のシミュレーションとしての役割を担う
ことができる希少で貴重なツールです。
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